☆記録管理学会2012年度研究大会閉会における実行委員長声明☆

記録管理学会 2012 年研究大会閉会における実行委員長声明 

 

 

 2011 年4 月、記録管理学会にとっても積年の懸案であった公文書管理法が施行された。その直前に日本を襲った東日本大震災は、地震、津波などの自然災害とともに、原発事故による放射能汚染という長期的かつ克服困難な状況がもたらした。この困難な状況の中で、人々は遭遇した事象や困難を未来に伝えるために、記録を作り、記録を残し、記録を伝える努力を重ねている。大震災の記録を永遠に残すことは昨年 5 月、東日本大震災復興構想会議が打ち出した「復興構想 7 原則」の原則 1 でも強調されている。  

 

 この中にあって、記録管理学会 2012 年研究大会は、5 月 25 日、26 日の二日間にわたり、中央大学多摩キャンパスを会場に、会員及び関係者 57 名の参加を得て、記録を作り、記録を残し、記録を伝えるために、記録管理が「なぜ」必要なのか、記録管理は「何のため」、「どのように」に行われるのかについて、議論を行い、次の各点を大会の成果として確認した。 

 

1.記録を作らなければ、事実は記憶の外に消滅してしまうこと 

2.記録を残すには、そのための意図的な努力と確固たる制度が欠かせないこと 

3.残された記録は、適切なアクセスの方法が準備されなければ、利用が不自由になること 

4.記録を長く残し続けるには、さまざまな技術とともに、そのことを是とする哲学が求められること 

5.災害による被害を減らすためには、過去の記録を適切に評価し、それぞれの時点において過去の教訓を生かすこと 

6.個人であれ、組織であれ、記録の作成、維持管理、保存について、必要十分な知識と、残そう、伝えようとする意思をもつことが、将来にわたっても、これまでの経験を確実に生かす生活態度を醸成するであろうこと。  

 

 これを踏まえ、記録管理学会 2012 年研究大会は、記録管理についての認識の向上、とりわけその理念への理解を社会で増進することが、震災復興にむけた記録管理学会の新たなミッションとなることを認識し、今後記録管理学会会員はそのために研究調査を行い、一般社会に対しては、記録管理が立脚するものの考え方と技術、すなわち記録管理の哲学と実務の普及に一層努めてゆくことを宣言する。 

 

 

2012 年 5 月 26 日 

 

記録管理学会副会長 

2012 年大会実行委員長 

小川千代子 

 

 

(2012 年 5 月 26 日閉会行事で読み上げ、会場の賛成多数で採択された)